Lenormand Story

ルノルマン物語

マドモアゼル ルノルマンがどのような人生を送ったか、簡単なストーリーを書きました。

ルノルマンカードをリーディングする方には、是非、知っておいてほしいと思います。

 

 

                                小宮ベーカー純子

 

 

マリーアン ルノルマンは、幼少のみぎわに、父を亡くし、再婚した母はすぐに妊娠するも、出産で命を落とし、マリーアンとその妹、そして実の息子の3人の面倒を見る女性といっしょになった義理の父親は、次の伴侶も出産で亡くす。

 

義理の父は、そののち添えとなった女性に子供たちをたくし、パリで事業を始めるために家を出る。 おとぎ話によくあるように、マリーアンは、のち添えとなった若い女性にいじめられ、見かねた叔父に修道院に入れられる。

 

ところが、修道長が隠していた不正が、マリーアンには見えてしまった。

 

ずるいことをしていると口走った結果、処分を受け、行きついたところは下着縫製工場のお針子。 飢饉が起きて仕事もなくなり、縫製工場で油を売っていたマリーアンに、お針子の一人が見たこともないカードを見せてくれた。

 

時代をときめく占い師エッティラのカードがシャッフルされ、うながされるまま2枚のカードを引くと、それは、

 

「力」と「太陽」

 

のカードがだった。

 

 

「すごい!マリーアン、あなたの成功は約束されているわ。」

 

 

同僚のお針子の言葉に、文字通り力と光明を得たマリーアンは、

 

 

「そうだ、義理の父がいるパリに行こう!」

 

と、心を決めた。

 

マリーアンは、いつかパリに行く時に着ようと思っていた、とっておきの白いドレスを着て、小さなバッグに身の回りのものを入れると、ホメ―ロスの本を片手に、戸口に立つと、 残された妹と弟を抱きしめ、アランソンの町から、パリへと向かった。

 

 

 

パリの義理の父の店で、マリーアンが商品を売ったり、お勘定をしたりしていた、ある日、一人の客が声をかけた。

 

「君は計算にたけている。どうだ、数字の魔法について知りたくないか?」 手渡されたのは、カバラの数秘術の小冊子。

 

マリーアンは、乾いた喉をうるおすかのように数の秘密の本を読むと、そこから一気に、オカルトの世界へと入っていった。

 

占星術を習い、星の並びで戦略的に宝くじをあて、オカルトが芽吹くロンドンに向かう。

 

そこで出あった頭蓋骨鑑定のフランスの医師に 「予言者にぴったりの頭蓋骨だ。」 と太鼓判を押されると、次に、マリーアンは上流階級向きの占星術サロンを開き、看板を掲げた。

 

「マリーアン ルノルマン パリの占星術師」

 

しかし、そのころ、フランス革命が勃発し、上流階級は処刑を恐れ他国に逃げ始めた。

その様を見たマリーアンは、

 

 

「ロンドンになんか要る場合じゃない!こんな時にこそ、私はパリで活躍するべき!」

 

小柄で小太り、決して美人とは言えないけれど、才能と勇気、そして運だけは誰よりも強いと信じているマリーアンは、革命の真っただ中のパリに再び向かった。  

 

ルクセンブルグ宮殿に近いサンジェルマンの一角に、サロンを借りて占いを始めると、義理の父の店で習った通り、占いを商品として少し高めの値段をつけた。

 

 

すると、間もなく、風の便りを聞いて、占い好きの高貴な女性がやって来た。 新しいカードを箱から出して、マリーアンは慎重に質問をしていく。

 

「好きな花は何?冬と夏ではどちらが好き?犬は好きですか?」 およそリーディングとはかけ離れた質問に答えていくと、カードはそこに展開され 貴婦人は、マリーアンの緑色のテーブルクロスの上に展開されたトランプのグランタブローに目を見張った。

 

 

「私の前に座っている方は、将来のフランスの皇帝の妃となる方だと出ました。」

 

 

まさか?と、驚きを隠せない貴婦人は、叫び声をあげた。 その人こそが、のちにマリーアンの信奉者となり、友情を育てたジョセフィーヌ ボハネスだったのだ。

縫製工場のお針子に見せられたカードは「力」と「太陽」 そのカードは、ミラクルと成功を意味する、エッティラのタロット。 その予言通り、マリーアンは数回、投獄されてもギロチンを真逃れ、フランス上流階級の人々や、ロシアの王子、更にはマリーアントワネットの晩餐会に呼ばれたという。

 

半面、革命家たちの運命を読み、ロベスピエールやマラー、サンジャスの運命も言い当て、 市井の人たちのために、汚いスカートを重ね履きして、頭にはターバンと羽をつけて、セーヌ川のポンヌフの橋の上の占い師を演じた。

 

「今、すぐ行って助けてあなたの息子が危険な目にあっている!」

 

「今は、わからないでしょう。でもあなたたち2人は、結ばれる運命よ。」

 

マリーアンの言葉は、革命の時代を生きる人たちに確実な示唆を与えた。 予言したどおり、ナポレオンは離婚したのち失墜。

 

その後、ジョセフィーヌは、マルメゾンで他界。

 

 

 

革命は過ぎ去り、再び王政が戻ってきた。 70と4年を過ぎたある日、マリーアンはうかつにも予言をはずしてしまうことになる。

 

108歳まで生きると公言したのに、パリの街に薔薇の花が咲き誇るころ、 神様がお迎えに来てしまったのだ。

 

 

「一体、この長蛇の葬列は誰のためか?王族か?貴族か?どんな方の葬列なのだ?」

 

 

「いいえ、王族でも貴族でもありません。マドモアゼル ルノルマン。ポンヌフの橋の上に立っていた占い師よ。」

 

 

それを聞いた人は、

 

 

「ああ・・・。」

 

 

と小声をあげると、帽子を脱いで、葬列の最後に加わった。

 

 

フランス革命のような先行きのわからない時代に、人々に希望と行く先の未来を伝えたルノルマンの知恵が、エッティラを思わせる美しいカードになって、今、この時代に戻って来た理由は何でしょう?

 

 

答えは簡単、

 

「こんな時代にこそ、私が活躍するべき!」

 

 

未来をもたらすリーディングにかかわるすべての人の魂の希求を受けて、マリーアン ルノルマンが甦ってきたのだ。

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