グリモワール(仏: grimoire、仏語発音: [ɡrimwar][1][2])とは、フランス語で魔術の書物を意味し[1]、特にヨーロッパで流布した魔術書を指す。グリモワ、グリモアとも表記される。奥義書、魔導書(魔道書)、魔法書ともいう。類義語に黒本、黒書(black books)がある。
狭義では悪魔や精霊、天使などを呼び出して、願い事を叶えさせる手順、そのために必要な魔法円やペンタクルやシジルのデザインが記された書物を指すが、魔術を行う側の立場から書かれた悪魔学書、魔術や呪術などに関する知識、奥義を記した古文書、書物全般のことを指す場合もある。
『ソロモンの鍵』『ソロモンの小さな鍵』『黒い雌鶏』などが有名で、特に『大奥義書』の異本『赤竜』に加えられた、黒い雌鶏を使った召喚儀式に登場する「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」(Eloim, Essaim, frugativi et appellavi)[3][4][5]という呪文は、『魔界転生』や『悪魔くん』などの作品に取り入れられ、日本でも有名である。WIKI
『ホノリウスの誓いの書』(The Sworn Book of Honorius)もしくは『誓書』(Liber iuratus)は中世の魔法書のひとつである。成立年代は定かではないが、13世紀に『聖なる書』(Liber sacer)として言及されており、中世盛期のものであることを主張しているように見える。ヨハンネス・ハルトリープ(1456年)はニグロマンティア[1]に用いられる書物のひとつとして言及している。保存されている最古の写本は14世紀のもので、大英図書館スローン文庫の写本番号3854(フォリオ117-144)である。スローン稿本313は14世紀末か15世紀初頭のもので、一時期ジョン・ディーの蔵書であった。本書は中世の魔法書の現存する最古のもののひとつである。
本書は、自分たちのすべての知識を一巻の書物にまとめることに決めた魔術師たちの協議の産物と推定され、ナポリ、アテネ、トレド、テーベなど主要な魔術の中心地から811人の魔術師が集まって会合を開いたことが本書の発端として物語られている。93の章があり、煉獄から自分の魂を救い出す方法から、盗人を捕らえたり財宝を発見する方法まで、多岐にわたる問題を扱っている。霊を強請し命令する方法やその他の魔術作業についての多くの教示、そして天界に何があるのかといった気宇壮大な情報についても記されている。他の多くの魔法書と同様、採用すべき適切な作業と護符についての長ったらしい記述がある。
天使的諸力やソロモンの鍵にみられるような護符を多用していることから、本書は「ソロモン系グリモワール」に分類されることがある。
現存する写本によれば、本書はエウクレイデスの息子、テーベのホノリウスという人物によって書かれたという。その後、テーベ人ホノリウスの伝説はローマ教皇ホノリウス3世に取って代わられ、17世紀に『教皇ホノリウスの奥義書』(Le Grimoire du Pape Honorius)という魔法書が出現した。18世紀にフランスで広く流布したこの黒本は俗悪な雑多なまじないを多く収録している。
^ ネクロマンティアが転訛した語で「降霊術」の意であり、「黒」魔術を含意する。